すっぱい葡萄と狸さん 〜新イソップ物語〜

あるお腹を空かした狐さんが葡萄棚から葡萄の房の下がっているの見つけて、それを手に入れようと頑張っていました。そしてしばらくすると狐さんは『あれはまだ熟れていない』と言って立ち去りました。

それを木陰に隠れて見ていた狸さんは、狐さんが見えなくなったの見計らってから、その葡萄を一粒だけ取って食べてみました。するとすっぱくてすっぱくて吐き出してしまいました。

『あれ?さっき狐さんが向こうの葡萄を取り損ねた時は、何も言わなかったぞ?』と、ふと狸さんは思い浮かべました。そこで『もしかして、あの狐さんの葡萄を見る鑑識眼は確かなものかも知れないぞ』と思い立って先の葡萄棚へ収穫に行きました。

すると案の定、今まで食べたことのない美味しい葡萄でしたので、思いっきり仲間の狸さんたちを総動員して収穫にあたりました。しかも自分たちだけでは食べきれないほどの収穫でしたので市場にも持って行き、全くその良質ゆえに思いのほか高値で売れ、おかげで前から欲しかったテレビを携えて帰ってきた狸さんたちでした。



さて数日後、狸さんがテレビを見ていますと、何やら狐さんが民家に入って葡萄を盗んで捕まってしまったニュースが流れていました。どうやら狐さんの言い分ですと、おいしい葡萄の在処を下調べしておいたのに、明日道具を揃えて取りに行ったら丸ごと収穫されていて、帰り道で同じ葡萄があったのでついつい出来心で盗んでしまったと言うことでした。

それにたいして心理学者さんは『あの狐は、いつも正当化ばかりしているから、これも自業自得ですね』と解説されていたので、狸さんも心理学者さんのおかけで狐さんが保釈された後も美味しい葡萄の先取りが続けられると考えながら、まだ食べ切れていない美味しい葡萄を頬ばったそうです。



おしまい