『ギリシャの蟻』と『四面楚歌』 〜分業意識と外交意識〜

現在の我々が知るところのお話には、ギリシャで作られたと言われる『蟻とキリギリス』という物語があります。全く互いに仲良く暮らしていればいいものを、どうしてそんなことになってしまったのでしょう。

それは数匹の蟻さんたちが『音楽なんかやってる奴らに備蓄食料なんか分け与えてやることはない』と宣伝し始めたことにあります。

するとそれにつられて全ての蟻さんたちも備蓄食料を分け与えないことに従ったため、すっかりキリギリスさんたちが絶滅してしまったのであります。



ところが蟻さんたちにとってのハッピーエンドにも続きがありまして、ある日のこと、なんと隣の地域に住む蟻さんたちの集団が攻めて来たのであります。しかも敵側の蟻さんたちの士気はキリギリスさんの鳴らす軍艦マーチによって高められているのであります。

もちろんギリシャの蟻さんたちも自らを守るために戦うことになったわけで、その指揮をとったのはキリギリスさんの退治を扇動した数匹の蟻さんたちでありました。

ところが扇動させられた他の蟻さんたちは、キリギリスさんの攻めてこないことをよいことに従っただけだったので、実は戦うのはあまり得意ではなかったのです。

ですから士気が高まった強い敵の蟻さんたちに即座に降伏し、忠誠を誓ったのでありました。

こうしてキリギリス退治を扇動したギリシャの蟻さんたちも、結局は『四面楚歌』の状態に追いつめられたのであります。





ところで『四面楚歌』の『楚歌』とは、取り囲んだ側の歌ではなく、取り囲まれてしまった側の歌だということをご存知でしょうか?

もともとギリシャの蟻さんたちはキリギリスたちと共に高い文化を築いてきたため、周辺の虫さんたちからも崇められながら文化を輸出する立場にあったのですが、内乱によって自国のキリギリスさんを退治してしまったのです。

そうです。隣の蟻さんたちの士気を高めていた曲とは、まさに自らが親しんでいた曲だったのであり、隣に伝わったものを聞き返していたのでありました。